blog -起承転結-
2022/05/06
副校長の春夏秋冬_4
姫路女学院中学校・高等学校は、リベラル・アーツの学びを大切にしています。「思いやり」と「心づかい」に根差す「教養」を身に着けた後には、世の中のありようを多角的な視点からみて課題を発見・分析し、その上で課題解決に向けた実践的な力をつけることが大切になります。リベラル・アーツの学びは、日々、複雑さを増している現代の世の中にあって、自分に対して向かってくるさまざまな課題に向き合いながら、自分の力と考えによって歩んでゆくために大切なのです。
姫路女学院では土曜日をリベラル・アーツ・ゼミとして、第1週および第5週がある月には、社会の一線でさまざまな実務・実践の経験を積んでおられるプロフェッショナルの先生に来訪いただき、少人数クラスのゼミナール形式で生徒たちが学んでいます。音楽や建築など古代ギリシャ・ローマ時代のリベラル・アーツの学びに直結するものに加え、持続可能な開発目標(SDGs)に関連して地球環境に焦点をあてたものまで17の講座のどれか一つに生徒全員が参加するものです。「高校時代に自分がこのような学びの機会があれば」と生徒のみなさんをうらやましく思います。
ゼミの当日、私は毎日新聞大阪本社編集局の安部拓輝先生の「姫路のまち探究」をテーマとするクラスに出席しました。冒頭、安部先生は、①私が記者の技を伝えるというよりも、皆さんに姫路の過去を深堀して、そこから未来を考えてもらいたい、②せっかくだからそれについて書いてみて、面白ければ校外に発信してみよう、その上で③身についたことを振り返ってみよう、と生徒に語りかけました。自分たちの身の回りにあるものの素晴らしさに気づくことの大切さ、私たちが求める問題・課題への答えはひとつではなく、いくつもあることを強調されました。皆が同じ目線で学び合うことの大切さを生徒に話された時には、「これこそリベラル・アーツの学びで大切にしたいことだ」と私自身が大きく頷いていました。
私たち、教育にかかわる者は、どうしてもひとつの方向に導こうとしてしまう傾向があります。安部先生のクラスに、ひと時、身をおかせていただき、教育に大切なのは、それぞれの生徒の発想や状況に応じ、個性を大切にしながら、どれだけ自分を表現できるようにしてあげられるかだと痛感させられました。姫路女学院が大切にしているリベラル・アーツの学びを、ひとつひとつ形にして積み上げることで、学校関係者のみならず、地域社会の皆様にもご理解いただき、評価していただけるよう、頑張りたいと改めて感じました。