blog -起承転結-
2022/06/07
副校長の春夏秋冬_7
5月半ばに、摺河祐彦理事長とともに、外務省の姫野勉 特命全権大使(関西担当)を表敬訪問させていただきました。姫野大使は、「ある人が抱く国のイメージは、最初に出会った人によってかなり影響を受ける」と話されました。既成概念なく、全くオープンな環境で接する社会や文化のイメージに対して人が影響を及ぼすとすれば、今この瞬間から、もっと自分を磨き、コミュニケーションを通じて考えや心をくみ取る力をつけてゆくことが大切だと考えさせられました。フェイクニュースをはじめとする信頼感が持てない情報が氾濫する今日の世界において、姫路女学院が校訓の中に盛り込んでいるように、人を敬い、真実を求め、誠実に社会と向き合うことが大切であることを、再確認させていただきました。
姫路女学院の教育の到達点として、“国際教養人になる”という目標が掲げられています。私は、1998年、アメリカ合衆国の五大湖にあるオハイオ大学のコミュニケーション大学院に留学して博士号(Ph.D.)を取得しました。帰国してから、上智大学でメディア・ジャーナリズムを教授する立場の教員となりましたが、今日までずっと「人に何かを伝える」ことの難しさを感じています。
「自分が思うことを伝えれば、それでよいではないか」と人は単純に考えてしまいがちですが、人間が情報を発信する際のメカニズムをコミュニケーション学の観点から研究してみると、そこにはさまざまな視点や論点が存在していることが見えてきました。自分が、米国の大学生として異文化環境に身を置いてはじめて、コミュニケーションについて意識することが、いかに大切かということに気づかされたのです。
日本の外に出た時、日本的な奥ゆかしさである「阿吽の呼吸」で何かを伝える手法は到底通じないことなどはその一つです。他方、「日本」を意識して世界の国や地域と向き合う時、日本らしさとは何かをしっかり考えておくことの大切さも実感されます。その意味でも、人生の早い内から自分とは異なる価値観や考え方に実際に触れることが大切です。姫路女学院は「世界とともに学ぶ」という考えに基づき、意欲的な海外交流を進めています。
現在、姫路女学院では、姉妹校提携を結んでいるインドネシアとポーランドの学校との間で友好な関係を築きながら交流を続けていますが、姫路女学院の生徒や私を含む職員の一人ひとりが、日本で学び・教える一人としてしっかりとした意識を持つことが大切だと感じます。先の東京五輪では、日本の「おもてなし」文化に注目が集まりましたが、私たち姫路女学院の一人ひとりが、いつでも異なる言語や文化を背景とする人々と接することができるよう、実践的な力をつけておくことが望まれます。大きく変化を続ける世界は、自分たちの暮らしのすぐ傍にあることを覚えておきたいと思います。